(短編)狭い六畳の部屋

 

 

現在私は一人暮らしですが、部屋がすっっっごく寒いです。暖房をつけて寝ないと、とてもじゃないけど朝布団から出られない。

おかげさまで電気代は、使わない時期の倍ですがね。これに関しては諦めです。

諦めていますが、泣きそうです。切実に。

 

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狭い六畳の部屋

 週末は、必ず恋人に会う。

 恋人とは職場で出会い、「好きです」と告白されて交際を始めた。もうかれこれ半年が経つけれど、会っても会っても足りないと思ってしまうのは私だけだろうか。

 一緒に出掛けることもある。水族館へ行ったし、イルミネーションを見に行ったこともある。ショッピングにも行ったし、ドライブにだって行った。美味しいものも食べに行った。

 でもそうして一緒に過ごす週末の大半は、日がな一日、恋人のベッドの上に寝転がってぼんやり空を見ている。

 窓越しの空は、窓が汚いから薄汚れて見える。

「天気がいいよ。出掛けようよ」

 そう言っても返ってくるのは、「えー、やることあるんだけど」なんてつまらない言葉。

「ごはん買いにスーパー行こう?」

 そう誘っても返ってくるのは、「今からやるドラマ見なきゃだから」なんてつまらない言葉。

 拗ねたところで相手なんかしてくれない恋人に、「そう、」と返せば、「うん」と八万円もする回転椅子を回してパソコン画面と見つめ合う。そこからは一切振り返ってはくれない。たまに椅子が動いたかと思えば、ただ姿勢を変えただけ。

 私もなにか暇潰しを持ってくればよかった、いつも思うのに。今週こそはずっと構ってくれるんじゃないかって無駄な期待をする。

 勝率は今のところゼロ。

 

 その日は喧嘩らしきものをした。理由なんか覚えていない。

 恋人は無言で、折り畳み机に広げた千ピースのパズルをしている。パズル同士をはめる時の、パチッという音が部屋に響く。

 最初は布団に潜っていた私だったけど、次第に耐えられなくなる。だって好きだから、こんなことで別れたくはないもの。

 恋人の服の裾を掴んで、ちっちゃな声で「ごめんなさい」を言う。涙がボロボロとこぼれ落ちていて、謝る声は掠れていた。

 恋人から返ってきたのは「ん、」。振り向いてはくれない。許してくれないのかなって、もっともっと涙が出る。

 そうしてしばらく泣いたけど、やっぱり部屋に響くのはパチッ、パチッという音だけ。

(……かえろう)

 涙を拭いて、立ち上がる。

 寝間着代わりに借りていた恋人のパーカーを洗濯機につっこんで、着て来た服に着替えた。

 ぐちゃぐちゃにした布団をキレイに畳み直して、昨夜洗い損ねた食器を洗い始めたところで「いいよ、俺がやるよ」と焦った声の恋人に手を掴まれた。

 恋人が立ち上がっていたことに気付かなかったし、怒っていると思っていた恋人の焦った様子も何故なのか理解できなかったし。驚いたやらなんやらで、止めた涙がまたボロボロとこぼれ落ちる。そのままギュッと抱き締められてはますます止まらない。

 泣きながらごめんなさいを繰り返す私と、そんな私の髪や背中を撫でる恋人。

 鼻をすする音は二人分聞こえた。

 

 そうして私はまた、逆戻り。ベッドの上でぼんやり、窓越しに空を見ている。食器は恋人が全部洗ってくれた。

 理由を覚えていなくても、怒らせた原因が私にあったことだけはわかってる。だから構って、も。出掛けよう、も。なにも言えなくて、もう何時間も無言で空を見ている。

 恋人は相変わらず、パソコン画面と見つめ合っている。

 六畳しかない部屋だから、ベッドにいる私から、椅子に座る恋人へは手を伸ばせば届く。でも今、私の位置から見えるのは、恋人の後頭部四分の一くらい。

 そのたった四分の一を時折見ては、倍の時間を使って空を見ている。