(短編)冬の友達がくれた幸運

 

 

先週、東京は大雪に見舞われました。4年前の大雪にも匹敵するほどだったとか。

当時は静岡にいた私。テレビの向こうが大雪で大混乱を起こしているのに、静岡はただの大雨だったあの日がすでに遠いです。

 

交通機関が乱れ、会社から帰宅指示が出て。結局途中で電車が来なくて足止めをくらって、吹きっさらしのなかで2時間程タクシーを待っていました。めちゃめちゃしんどかった

 

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冬の友達がくれた幸運

 寒がりのわたしは、冬はマフラーがないと外を歩けない。

 学生の頃は、使用期間はいつからいつまでとか、校内ではつけちゃダメとか、そんな規則ばかりだったから、寒いときは首を無理やり服に隠そうとしたりとかしていた。あまり意味はなかったけど。

 社会人になって使用期間とかいうわけのわからないことは言われなくなったし、会社にさえ入ってしまえば廊下も比較的暖かい。でもそれもあって、いつからマフラーをつけようか、悩む。

 昼間は暖かくても夜になって急に冷えたりする。今日の会社の同期たちとの飲み会は、まさにそのパターンだった。

「さーーむーーいーー」

 同期と集まる前に、個別で仲良くしている友人とお茶をしていた。家を出た頃はまだ暖かくて、お洒落を優先させてマフラーを置いてきたらこの様。愚痴もストレスもぶつけまくった飲み会が終わる頃にはすっかり外は冷えていた。

「寒くない?」

「さむい……」

 ストールを巻いている彼女がうらやましい。

「じゃあこれ、どうぞ」

 声と一緒に首に布の感触と、後ろからにゅっと回り込んできた誰かの手。

 驚いて首だけ振り向くと、入社した時からちょっと気になっていた彼がすぐ後ろにいた。お互いに中途採用だから年は同じではないけれど、同期として仲良くなった彼。

 彼とは身長差があるから顔がくっつきそうなほど近い、なんてことはないけど、でも近い。というか、身長差があるから、後ろからすっぽり覆い被さられてるみたいでこの方がドキドキするかもしれない。

「寒そうだったから」

「や、わたしはもう大丈夫だから! 自分が寒くなっちゃうよ」

 作った輪に端を通すだけのワンループ巻き。首が出ないように整えた彼は、にっこり笑ってわたしの隣に並ぶ。

「寒いからつけてきたんじゃないの?」

「ん?」

「ん? じゃなくてっ!」

 素知らぬ顔で、わたしの言葉は流されていく。これはなにを言っても無駄のよう。

 バックを持たない左手で、彼が巻いてくれたマフラーに触れる。ほんの少しだけ、肌をこする嫌な感じがした。

 昔から肌が弱くて。とくに首はそれが顕著で、使っても平気なマフラーを探すのには苦労した記憶がある。

 このマフラーは、絶対、自分では買わないもの。だけど、ちらりと彼の横顔を見て口に出したのは、先ほどまでの拒否とは違う言葉。

「ありがとう、」

「どういたしまして」

 その声がなんだか嬉しそうに聞こえたので、ああ、これが正しい返答だったんだなと納得する。

 マフラーを置いてきたのは失敗でもなんでもなく、むしろラッキーだった、なんて。にやけそうになるのを堪えながら、駅まで彼と並んで歩いた。