短編

(短編)どうしよう可愛すぎる

「ねえ、二人は夏休みの予定とかあるの?」 始業前、俺と彼女がそれぞれ別の雑誌を読んでいる時のこと。 彼女の友人が何気なく放った一言に、そういえばあと一週間で夏休みだったなと思い至る。 「付き合ってるわりに、一切そういう会話してなくない?」 そ…

(短編)愛の言葉のひとつもなかった

『別れる?』 『…………うん、それでもいいよ』 『そっか。わかった』 繋いでいた手はごく自然に離れる。 引き止める言葉は出なかった。涙も出なかった。 「ええっ!? あんたたち、別れちゃったの!?」 朝一番に一年付き合った彼氏と別れたことを親友に報告し…

(短編)誰かが引いた線

「あっ、会長!」 この学校で人から会長、と呼ばれるのは一人だけ。 先生の推薦で、高校一年の後半には生徒会に所属していた。そのままずっと経験を積んで、自然な流れで会長に立候補して、生徒会長になった。他に立候補者もいなかったから、誰かと争う必要…

(短編)もう戻らないあの日々

『ねぇ、ほら、見て! 桜!』 一緒に暮らす為に借りた部屋。そこのマンションから程近いところにある少し広い公園敷地に植えられた桜が見える。 『ちょっと行ってみない?』 引っ越したばかりで、片付けられていないダンボールがまだある。でも、いい加減飽…

(短編)お友達から始めましょう

「そういえばあんた、先輩にチョコレート渡してたよね?」 隣を歩いていた友達が、弄っていたスマホから顔を上げるや否やのことである。 「えぇー……いったい突然なぁにぃ……」 わたしとしてはあんまり思い出したくない出来事なんだけど。 先輩、というのはわ…

(短編)憧れは形を変えた

「っ、きゃあああぁぁぁぁっっ!」 「もー、朝から大きな声でなぁにー」 「お母さんってばどうして起こしてくれなかったのよぅっ!」 ドタバタドタバタと家の中を物凄い足音を立てて駆け回る娘に、台所に立っていた母はあらあらまあまあ、と頬に手を当てる。…

(短編)ひとまずは、さようなら

「今日で卒業とか嘘よ! うーそーっ! 嘘っ」 「うん、現実だね」 卒業証書の入った筒を腕に抱え、ブレザーの襟に安全ピンで留めた花の花弁を優しく撫でた。 この学校は模造花ではなく、生花だ。卒業準備の一貫で、自分たちで作った。なんの花かまでは知らな…

(短編)この熱は不運のせいじゃない

小さい頃から、ある意味不運だった。 遠足に、修学旅行、文化祭に、家族旅行に、少しの遠出。楽しみにすればするほど風邪を引いたりお腹を壊したり。軽ければ頭痛、腹痛あたりで済むけど、ひどい時は骨折とか。 まあどれも参加できないほどじゃなかったから…

(短編)震える手は隠したまま、

「――久しぶり」 そう言って私の横に腰掛けた彼は、最後に会った時と変わらない。たかが半年で変わることってそう多くはない。 静かにとつとつと言葉を落とす。そんな話し方をする人だ。大人びているのに、でも笑うと無邪気な子供みたいな印象を受ける。その…

(短編)狭い六畳の部屋

週末は、必ず恋人に会う。 恋人とは職場で出会い、「好きです」と告白されて交際を始めた。もうかれこれ半年が経つけれど、会っても会っても足りないと思ってしまうのは私だけだろうか。 一緒に出掛けることもある。水族館へ行ったし、イルミネーションを見…

(短編)冬の友達がくれた幸運

寒がりのわたしは、冬はマフラーがないと外を歩けない。 学生の頃は使用期間はいつからいつまでとか、校内ではつけちゃダメとか、そんな規則ばかりだったから、寒いときは首を無理やり服に隠そうとしたりとかしていた。あまり意味はなかったけど。 社会人に…

(短編)小さな一歩

「あれ、ネイルまた新しくなった?」 友達のカップを持つ手の指先が、前見た時とは違うネイルになっていることにはすぐ気付いた。 「そーなの! いつもとは違うサロンに行ってみたのー!」 かわいいでしょ?と、ご丁寧に目の前に両手指を広げてくれる。 大人…

(短編)憂鬱な朝に満たしたい睡眠欲

毎朝決まった時間に鳴るタイマーの音を聞くと、憂鬱になる。だから毎日、起きた瞬間から憂鬱だ。憂鬱だと思うから憂鬱なんだよなんていう理屈も、寝起きにはどうでもいい。 仕事は嫌いじゃない。でも、朝起こされることが嫌い。服のコーディネートを考えて、…

(短編)今日もまた、呟いた

あけましておめでとうございます! 今年も宜しくお願い致します! あっという間に年末年始の休暇も終わりそうで、休み明けに仕事が一気にドンッとくることを想像してゾッとしてます……。オソロシイ。 そして今年はブログの更新頻度をもう少し高くすることを目…